「絢翔に怒られてさ」
「…絢翔?」
「うん。楓夕のこと好きなら悲しませんなよって」
そっか…。
絢翔はああ見えて友達想いだから。
高嶺がいつまでも暗い顔をしてるの、見逃せなかったんだね。
「…10分、待ってたの?」
「え? うん。楓夕、来るかなーって思って」
「そう…」
それってさ、賭けじゃん。
もしあたしがこの時間の電車じゃなかったらどうしてたの?
なんて不安を抱いていたら。
「楓夕のことなんか全部わかるに決まってんじゃん」
また、ふっと笑った。
…ただそれだけのことで、奇跡みたいに感じる。
こうしてみたら、一度離れたのは正解だったのかもしれない。
「…楓夕、行こ?」
「うん…」
さりげなく手を差し出されたけど、握れなかった。
今、手汗すごいから、絶対。
握られなかった手のひらはゆっくり体の横におろされる。



