「おはよ、楓夕」





──シンプルに、息が止まりそうだった。





…というか、たぶん、一秒くらい止まった。





ドッドッ…と速める鼓動。
痛い。心臓が、痛い…。




だって、今までずっと避けられていた好きな人に、突然話しかけられた時の気持ち…想像できる?





場所は学校の最寄り駅。
改札を降りたところ。




バスの時刻表だと、バスの到着は今より10分前か、今より5分後か…。
ってことは、10分間ここにいたってこと?





「…楓夕?」


「あ……はい」


「なんだよ。俺、勇気出して話しかけたのに」





眉毛を下げて笑う高嶺。
あ…その顔、好きだ。




あたしと話さなかった間も、他の女子には見せなかった笑顔。



ようやく、見れた…。





「…泣きそうなの? なんで?」





高嶺と話せて、嬉しいから…。
なんて、言ってあげない。



ちゃんと、告白する勇気が出た時のためにとっておく。