「俺、まだあきらめませんよ」
「…へ?」
諦めないって…なにを?
ちさくん、さっきから言い切らないなぁ。
「あは。そんな顔させないって言ったけど、やっぱ俺、先輩が困ってる表情好きかも」
「…変なの」
「そう、俺変なんです。だから、その変なのに捕まんないよう、頑張って逃げてくださいね」
…逃げるって、ちさくんから?
逃げたりしないよ…。
だって、ちさくんは大切な後輩…だから。
「先輩は残酷だね」
そんなの…言われなくても分かってる。
あたし、高嶺にひどいこと言った。
やっぱり…謝らなきゃ。
高嶺より先に…。
…そう思ったところで、行動には移せないのだけど。
「また柊木センパイのこと考えてるなぁ」
「へっ……ご、ごめん」
「俺と一緒にいるのに他の男のこと考えられると、かなり嫉妬するんですけど」
あたしは眉毛を下げて、「ごめん…」と平謝り。
嫉妬? 嫉妬とは…。
兄弟のいる子供が、幼少期に妹か弟が生まれてお母さんが自分に構ってくれなくなることでヤキモチを妬いてしまう現象と同じだろうか。
「ふっ、やっぱその顔好きです」
「っ……」
あたしは、いつまで経っても”好き”という言葉に弱い。