「お前口悪いねぇ」
あー…。
柊木高嶺、珍しくイラついてる。
こんな意味の分かんない喧嘩に口をはさむのもごめんだ。
あたしはとんずらしよう。
「…じゃ、あとはふたりでよろしく」
「あ、先輩…」
「あ、楓夕」
ふたりの男を取り残して、あたしは咲花たちの元へ戻った。
席に座ってから視線をちさくんたちの方へ向けると、まだ言い合いを続けてて呆れる。
「おつかれ、楓夕」
「大変だなぁ、朝から」
ねぎらいの言葉をかけてくれる咲花。
他人事のように笑う絢翔。
…なんか、どっと疲れた。
今日の授業はもう頑張れないかもしれない。
「あのふたり、楓夕のこと大好きだよね、ほんと」
「幸せもんじゃん、楓夕」
…そうなのか?
迷惑こうむってるわけだけど。
まぁ…。
ふたりとも顔だけは整ってるし、スタイルはモデル並みだし、周りから見たら羨ましがられる対象なのかな。
でも実際はそんなことないよ、全然。
寿命が縮まる想い。
「寝るの?」
机に突っ伏したあたしに咲花が聞いてくる。
うん…もうね、クラスメイトからの羨望のまなざし、耐えられない。
いつか呼び出されていじめられたりとかあるんじゃないかな、あたし。
「寝るなら保健室行けよ」
絢翔。
保健室は仮眠室じゃないんだよ。
そこらへんしっかりしてるから、ちゃんと教室で寝るね。
オヤスミ。