「……は、」
吐いた息が白い。
冬の訪れを感じながら、一瞬足音が止んで静寂になった世界。
…人の気配がする。
あたしはそっと校舎の影に隠れて、声だけを聞く。
「ひ、柊木くんが好きです…っ」
また高嶺…。
恋心を自覚してからもこんなことが起こるなんて。
やっぱり、神様なんて存在しないんだろうなぁ、と思う。
「ふぅん。俺のどこが好きなの?」
「…え? 顔、とか…。いつもクールなとことか…」
顔? クール?
…高嶺は、そんなんじゃない。
あたしの前で見せる表情はいつでも太陽みたいで明るいし、クールとは縁のないような人だ。
それに…それって、顔だけじゃん。
「つまり、お前は俺の顔だけが好きってことね」
おなじことを思ったようで、高嶺はそれをはっきり口にした。
女の子がどこの誰なのか、見てないからわからないけど。
…間違いなく、あたしのほうが高嶺を好きだと、思う。
「え、ちが…っ」
「そうじゃん。…悪いけど、俺には好きな子がいるから、告白されるだけで迷惑」
「っ…」
「周りの奴らにも言っといて」
嬉しい。
そうやって言ってくれる、高嶺の気持ちがうれしい…。