片想いというのは、想像していたよりも楽しくない。



そりゃ、教室内に好きな人の姿があって、少し目が合うだけで嬉しくて…とか、そういうのはある。




だけど…。



なんてったって、相手は学年随一のモテ男。



常に女子に囲まれてかっこいいと言われまくっている姿を見て、嫉妬しないわけがない。




…だから、どちらかといえば、辛いことのほうが多い…かも。




もちろん、この恋を自覚したことは、一番に咲花に話した。
隠していたっていつかはバレるしね。




『やっと気づいたんだぁ~、いつ結婚式挙げるの?』と飛躍しすぎた返しに、これまた苦笑いすることになったんだけど。




結婚? まだ遠い未来の話。


…だって、まだ。
好きと伝えられるかどうかさえ、怪しい。





そんな最中、季節は11月に入った。
本格的に冬を迎えはじめて、もうマフラーがないと寒さをしのげない。




放課後、すでに首元まで防寒をして帰る準備万端だったあたしは、目の前で手を合わせている女子に、まぶたをぱちくりさせる。