「チッ…もう行こうぜ」
そういって、二人組の男は走って行く。
…はぁ、びっくり、した…。
「…楓夕、大丈夫?」
「あ、うん…」
まだうるさい心臓を抑えて、高嶺から少しだけ距離をとる。
振り返った高嶺。
…なんでか、顔は見れなかった。
「さっきの、ごめんね。勝手に…」
ごめんね、というのは。
たぶん、”俺の女”発言についてだろうと思うけど。
謝らなくていい、だってあたしは…。
力なく首を横に振って。
ウィーンとコンビニのドアが開くのを視界の隅にとらえた。
「楓夕~っ!!」
お手洗いから戻ったらしい咲花が、すごい勢いで飛びついてくる。
タイミング完璧だよ、咲花。
咲花がナンパ男に会わなくてよかった…。
「大丈夫? ナンパに捕まったの? なんもされてない?」
まさしく、質問攻め。
「うん、大丈夫だよ」と咲花を安心させるように笑いかけて、高嶺のほうにも体を向ける。
視線は落としたまま。
「…高嶺も、助けてくれてありがとう」