「…楓夕さぁ」
「っ……」
「それ、どういう意味か分かってんの」
さ、と髪を撫でられてどうしたらいいかわからなくなる。
さすがに分かるよ…。
分かってるけど、これしかなかったんだもん…。
「はぁ…」
ため息をついた高嶺は、木の陰に向かって歩く。
誰にも見つからないような死角に隠れて、あたしに手招きをする。
「楓夕、おいで」
少しドキドキする胸をおさえながら、高嶺の元へ寄り添った。
ふたりしてしゃがんで、自然を見る。
「楓夕、虫平気?」
「…ムリ」
「あは。だよね、俺も」
高嶺も無理なんだ。
まぁ、虫苦手そうな顔してるもんね。
「でも、テントウムシは可愛いと思う」
「そうかな…毒キノコみたい。うしろの黒い斑点が」
「うわ、なんてこと言うの、楓夕」
「テントウムシ界隈に謝れ」…と。
いや。
テントウムシ界隈って、何?
くだらない疑問を抱いていたら。
「楓夕、こっち向いて」
「…ん?」
完全に、油断してた。
──ちゅ。
「いつもありがとね」
…そんな心からの感謝の言葉。
耳に入ってこないくらい、ドキドキ、心臓がうるさい。
いま…だって…。
おでこに、キス…された。
もう、ダメかも。
心臓、壊れちゃいそう。
「…その顔、やば、可愛すぎ」
遠ざかる高嶺の声。
今日があたしの命日になりそうです…。