「あの…ちさくん? そろそろ動きたいんだけど…」
「ダーメ」
ダメ…と言われましても。
この体勢。
非常にやりづらいというか。
…落ち着かない、というか。
「もとはといえば先輩が倒れこんできたんでしょ」
「そ…それは、そうだけど」
どうやら、離してくれる気はさらさらないらしい。
うぐ…失敗した。
ちゃんと立ち上がって正当に消しゴムをとればよかった。
なんて後悔…もう遅い。
「先輩。俺、もう勉強するの疲れました」
「…うん?」
「気分転換に、映画でも見ません?」
突拍子もない提案。
どうやら、あたしには拒否権がなさそう…。
でもあたしも集中力切れたとこだったし、ちょうどいいかも。
「それなら、あたし見たい映画があるんだけど…」
恋愛映画だけど、特に深くは考えずに提案する。
大丈夫…変なことにはならないよね?