「はい、そこまでね」
毎日、うざいくらい聞いている声。
…なんでここが分かったんだろう。
やっぱり、高嶺ってあたしのストーカー?
「あのさぁ」
いつもより何倍も低い声。
あたしでも肩が震える。
目を隠されていて前が見えないけど、きっとあたしに告白してきた男の子も困惑してるよね…。
「…俺の楓夕、口説かないでくんね?」
…な、なにを勝手に…!!
そんな言い方されたら勘違いしちゃうでしょうが…。
そして、あたしの予想通り。
「あ…浅桜さんって、柊木と付き合ってたんだ……ご、ごめんっ」
足音が遠ざかっていく。
ようやく外された目隠し。
あたしは高嶺のほうを振り返った。
「高嶺…っ」
「危なっかしいなぁ、楓夕ちゃんは」
でも…断りづらくて戸惑っているあたしを助けてくれたのかな。
「なんで俺の知らないとこで告白されてんの」
困ったように目を細めるその顔。
そんなの…あたしが聞きたい。
「楓夕は俺の、でしょ」
「…ち、がうし…」
「うん、今はそれでいいよ。…ゆっくり自覚させてあげる」
ぞく、背筋が凍った。
高嶺から逃げられない…。
何回も、わからせられる。
あたしがコイツに勝つ方法なんてないって、本当は気づいているけど…。
「…楓夕、帰ろ」
そういって差し出された手を簡単に握ってしまうくらいには、あたしはもう毒されているのかもしれない。