「浅桜(アサクラ)~」
三人で平和とも言えなくもない時間を過ごしていると、突然教室のドアのほうから名前を呼ばれた。
振り返ると、ドア付近の席の男子と、もうひとつ視線を感じる。
「ちょっと行ってくる」
咲花と絢翔に断りを入れて、ドアのほうへ向かった。
よく見慣れた顔だ。そして、だいたい何の用事かも分かってしまった。
「先輩」
と、呼ばれた。
高くも低くもない心地よい声。
「また弁当忘れていったでしょ」
「…ホント、ごめんなさい」
とりあえず謝っておく。
今年に入って何回目? って感じだよね。
この子は宇佐見知慧(ウサミ チサト)。
あたしより一個下の学年で、中学からの知り合い。
同じ中学ってだけあって家も近くて親とも仲がいいので、たまにこうしてあたしが忘れたお弁当を渡される、らしい。
少し長めな黒い前髪。
そこから覗くアーモンドアイが、女子からたいそう人気だという。



