結局。
あたしの最寄りでふたりそろって降りた。



家の近くまででいいって言ったけど、当たり前のように断られたから仕方なく隣を歩いてる。
足取り、超重い。





「これが楓夕が長年吸って来た空気かー」


「…変なこと言わないで」


「楓夕と一体化した気分」


「っ…ヘ、ヘンタイ!!」





ぽかっと一発高嶺の二の腕を殴れば、「いてっ」とヘラヘラ笑うだけだから、やっぱりコイツには勝てないんだろう…と、思う。





「てかさ」


「…うん?」





突然立ち止まった高嶺。
夕焼けに照らされて、栗色の髪が赤く染まっている。




見上げると、それはそれは端正な顔立ちがあたしを見下ろしていた。





「…今日の楓夕、可愛すぎて目のやり場に困るんですけど」





普段見ないような真剣に照れた顔。
そんなこと言いながら、しっかりあたしをガン見してるじゃない…。





「ホント、誰にも見せたくねー。俺以外とプライベートで出かけんのとか、ナシね」





そんなの、守れるかわからない。
だけどあたしが出かける男の子なんて、高嶺以外にはちさくんしかいないし。



たぶん、大丈夫だよね…?





「また楓夕のこと好きになった」





そんな顔して笑わないで。
さっきから、ドキドキしすぎて息が詰まる…。
声、出せない。





「…帰ろっか。また明後日には会えるし」


「…ん」




小さく頷いて、高嶺の少し後ろを歩いた。
その背中が、やけに大きく見えて。



高嶺のこと、恋愛として好きかはわからない。
この先、まだどうなるとかも。




だけど、間違いなくプラスな方向に感情が動いてる。
それだけは、はっきり言える…。





…あたしね。
いつだって、高嶺には手を繋いでいてほしかったよ。