「はぁ…」
ため息をつくと、電車がゆっくり停車した。
…え? ここ、何駅…?
きょろきょろあたりを見渡して、ようやく駅名が分かったころには時すでに遅し。
ドアを閉めた電車は、またゆっくり動き出す。
「…はい、もう送るしかなくなっちゃったね?」
高嶺の不敵な笑みを背に、絶望。
今の、高嶺の最寄りじゃん…。
ここまで来て、『次の駅で反対方向に乗って帰って』なんていうわけにもいかず。
がっくり、肩を落とす。
「俺と帰るのそんな嫌?」
「…違う。わざわざ往復させたくないの」
手間だし、絶対疲れるし。
あたしだったらちょっとめんどくさいな…って思っちゃうから。
「…楓夕って、俺のことなんにも分かってないなー」
「え?」
高嶺って。
たまに意味深なことを言っては、聞き返しても答えてくれないときがある。