( 楓夕SIDE )




◇ ◇ ◇






「楓夕がそんな悩んでるの珍しいね」




10月初旬の放課後。
咲花の声でさらに肩を落とす。
あたしだって適当に決めたいよ。でもさぁ…?





「あたしのとき、ちょっと高めのヘアオイルくれちゃったんだもん…」





なんのことかと言うと、もうすぐ実兄の誕生日が迫っていて、そのプレゼントを決めかねているところ。




お兄ちゃんなんて適当でいいのに、どうしてもちゃんと返さなきゃ…と思ってしまう。





「男の人って何あげたら喜ぶんだろうね」


「…そこはやっぱ、恋愛の大先輩じゃん、咲花は」





期待の眼差しを向けると。




「いや、あたし年上と付き合ったことないから」




ばっさり切り捨てられた。
それに、咲花は彼氏の誕プレ決めるときいっつも目についたもの適当に買ってたもんね。




じゃあダメか…。
うーん、ちょうどいい関係値で、客観的にアドバイスができる人…。



そんな都合のいい存在、さすがにいないか。


もう一度頭を抱えていると。