「…高嶺っ」
楓夕とはじめて話した日のことを思い出していたら、後ろから呼ばれた。
大好きな、愛おしい声。
俺が今日一日求めていた、声…。
「ま、待って」
学校の校門を抜けたあたり。
結局ひとつも会話なかったな、って思ってたんだけど。
小さな手で、きゅっと制服の裾をつかまれる。
…やば。心臓、うるさい…。
「あのさ…ごめん、高嶺」
上目遣いやめろ、バカ。
俺を煽ってんのか。
…とか、そんなこと考えてる時点で、俺が怒ってないことはもう明白だった。
「…俺と話せなくて寂しかったの?」
すぐに”いいよ”とは言わず、わざと意地悪を言う。
楓夕はびくっと肩を震わせたあと、少し顔を赤くした。
俺の前だとよくするその顔。
…かわいすぎるから。
他の男に見せたくないんですけど。
周りに人いなくてよかった…。



