『…なに?』
その上目遣い。
他の女子とは明らかに違う。
計算とか、そういうの一切感じさせない。
本気で帰りたがってる顔。
…いいね、気に入った。
『俺、柊木高嶺』
『…はぁ。知ってるけど』
知ってもらえてた。
そりゃ、同じクラスなことに一か月も気づかないの俺くらいか。
『高嶺、って呼んでもいいよ』
『…いや。遠慮しとく』
目をそらした楓夕は、”女子から睨まれそうだし”と小さくつぶやく。
俺から名前呼びを推奨するのもはじめてなのに、それを断られるなんてもってのほか。
『一緒に教室まで行こ、楓夕』
『…えぇ』
嫌そうな顔。
目立つの嫌いなタイプ?
俺はそのときには、もう決めてた。
コイツ、絶対俺のものにする。
『ちょっと離れて歩いてくれるなら』
『ムリ』
さり気に手でも繋いでやろうかと楓夕の手を見つめてみたけど。
…緊張して、無理だった。
楓夕と手を繋ぐ想像をしただけで手汗が噴出してくる。
その時点で俺は楓夕の沼にハマっていたのかもしれない。



