そして間もなくして、俺は二年生にあがった。
男子からは話しかけられたら普通に話す。
女子には話しかけられてもフル無視。
そんな生活を送ってたから、楓夕が同じクラスにいること、しばらく気が付かなかった。
しばらくって言っても、たぶん一か月とか、そのくらい。
ある日、廊下ですれ違った。
選択授業の音楽から、教科書を抱えて帰ってくる楓夕。
通り過ぎる前から、楓夕のまわりにはいい匂いが漂っていて。
すれ違う間際、不意に俺を見上げて小さく会釈。
…話しかけてこないんだ。
あんな風に、目が合っても声をかけてこない女ははじめてだった。
思えばそこから少しずつ気になっていたのかもしれない。
通り過ぎたあと、少し頭を捻る。
今の…。
名前、なんだっけ。
どっかで見たことある顔…。
浅川? 浅野? …浅、浅…。
あぁ、浅桜!
下の名前は、ちょっと思い出せない。



