毎日、朝起きて、顔を洗って、朝食を食べて、家を出て。
登校して、友達と騒いで、一日を終える。
ただそれだけを望んでた。
目立つのとか、嫌だし。
友達は少なくても、狭く深くでいいし。
だから、恋愛とか、ホントいらない。
迷惑だし、めんどくさい…って、思ってた。
ーー今でも、鮮明に覚えてる。
夏休みの出校日。
課題を提出するだけだったあの日、教室に残っててと呼び出された。
半日で終わりだからまだ外は明るく。
夏の日差しが、肌を焼いた。
誰もいなくなった教室。
おもむろにカギを閉めたあいつが、一言、口を開く。
『俺、楓夕のこと好きなんだけど、マジで』
絶望、の二文字がぴったりだった。
目の前に立って顔を赤くしているのは、紛れもなく、学年有数のイケメン。
二年生に上がってから話すようになったけど、それまでは存在すら知らなかったような男。
…だから、好意を抱かれているなんて、想像もつかなかった。