トントンと、静かにノックしてから部屋のドアを開ける。

「おはよう深青さん」

 部屋の向こう側は、床から天井まで、全面が大きなガラス窓になっている。ベランダは無い。窓を開けることもできないが、眺めは抜群だ。新宿の高層ビルの群れが一望にできた。

 その窓の前に置いたチェアに、母が窓の方を向いて座っていた。

「寝ていなくて大丈夫なの」
「今日は具合が良いから」
「それならいいけど」

 ベッドの横のサイドテーブルに、持ってきた手下げ袋を置く。中には何枚ものCDが入っている。

「頼まれたもの、ここに置いたから」
「ありがとう」

 実家へ寄り、母の部屋の棚から引き抜いてきたCDだ。昔のJ-POPのアルバムばかり。わたしが知っているアーチストも多い。