ブレイクを果たした女優の子として、当然のことながら華やかな芸能界に憧れを抱いたが、母の娘であってもわたしは母ほどには美人ではない。自分でもそれがわかっていたから、無謀な望みは捨てた。

 大学を卒業後、とある企業に就職し、そこで出会った人と二十四歳で結婚。退職して主婦になった。が、すでにお腹には子どもがいた。

 子育てが落ち着いた頃に、趣味で書いていた恋愛小説を公募に出したところ、いきなり大賞を受けた。その後も続けざまに女性文学賞や直木賞を受け、三十路を過ぎてから小説家としてデビューした。二年前のことだ。わたしの半生は母によく似ている。

 公開するかどうかは別として、余命いくばくもない母の半生を書いてみようと思った。