半年ぶりの斉木病院だが、母が入院していた頃と変わっていない。毛足の長い絨毯が敷かれた廊下を、スタッフについていく。

「失礼します。加藤様がお見えになりました」

 特別室のドアをノックし、部屋の中へ。

「お久しぶりです。どうぞお座りください」
「こちらこそ。母がお世話になりました」

 斉木先生に挨拶をし、ソファーに腰を下ろす。

 ベッドは無くなっていた。サイドテーブルもチェストも棚も、母がいた頃、ここにあった調度類は何もない。

「この部屋はもう使わないので」

 周囲を見回しているわたしの視線に気づいたらしい。斉木先生がポツリと言った。

 持参したお礼の品を手渡す。

「立派なご葬儀でしたね」
「斉木先生も母の葬儀にいらしていただいてありがとうございます。きっと母も喜んでいることでしょう」

 母は眠るように逝った。苦しくなかったはずはないが、安らかな顔をしていた。