あの、謎めいたセンテンスをつぶやいた母の背中へ

「お母さんが愛した人って、もしかしたら斉木先生では?」

 わたしが最も聞きたかった質問をぶつけた。

「だからこの病院を選んだ。斉木先生がいるから。斉木隆一郎がお母さんの」
「私の話はこれでおしまい。あとは墓場まで持って行かせて」

 否定しないのは肯定したのと同じだ。ならばまだ母に、是非とも確かめたいことがあった。

「教えてお母さん。お母さんがお父さんと結婚した時にはすでに妊娠していた。わたしを身ごもっていた。そうよね」
「そうよ」
「わたしの父は…本当は…」
「あなたは私の子供で、私はあなたを愛している。心から愛しているわ」