【短編】人気者な後輩の甘い意地悪






「花先輩」


「っ…」




大好きな、呼び方。
優しい声色。



ぜんぶ、大好きだった。
ううん…今でも、大好き。




「俺たち、両思いだよ?」


「…え?」


「やっぱり気づいてなかったんだ」





楽しそうに笑う天城くん。
確かに。なんで気づかなかったんだろう。



わたし…念願かなって、天城くんと両想いに…って、やっぱり夢?





「夢にしないでよ。…俺だって、先輩のことずっとほしかった」


「……ほ、欲しかった…?」


「うん。だって先輩、俺のこと意識しまくりなのに、全然気持ち伝えてこないし」





いや、そんなこと言われたって。
天城くんは残酷だ…。





「言えるわけないよ……天城くん、わたしなんか微塵も興味ないと思ってたし」


「ふうん? …じゃあ、これから嫌というほど教えてあげる」


「…な、なに…」





気づいたときにはすでに遅し。



ふわっと天城くんの甘い香りに包まれて、くちびるには柔らかい感触。
いま、キスされているんだと気づくには、すこしのタイムラグがあった。