【短編】人気者な後輩の甘い意地悪






「っ…あ、天城くん、今日…女の子とキスしてた…っ」





あーあ。
もう、涙があふれて止まんない。



天城くんのせいだからね。
ぜんぶ、ぜんぶ。





「…見てたの?」


「っ…ぬ、盗み聞きしようと思ったわけ、じゃなくて…」





この期に及んでもまだ軽蔑されたくないなんて、わがまますぎるかな。
ごめんね…それくらい、大好きだったの。




それなのに、なぜか天城くんはふっと笑った。





「ごめんね、嘘だよ、先輩」


「…え?」


「本当は、あのとき先輩に見られてること知ってた」





…知ってた、って…。
じゃあ、なんで…。



ますますハテナが浮かぶ。





「…先輩がなかなか言ってくれないから、嫉妬させようと思ったんです」


「へ?」


「キスだって、本当はしてないよ。いいよって言ったあと、やっぱり嘘って言って帰らせた」






待ってよ…。
脳の処理が追い付かない。
なかなか言ってくれないって、なに…?