【短編】人気者な後輩の甘い意地悪






「顔真っ赤でかわい」


「…や、あの…」


「しどろもどろになっててかわいい」


「~~っ」





もう無理!!
耐えられない!!





天城くんと、ホントはもっと一緒にいたいけど。
心臓が持つ気がしない、ので…。




わたしは立ち上がって、この場を離れる決意をした。





「先輩、もういっちゃうんですか」


「…うん、ほら、そろそろ朝礼はじまるし」





ふぅ、と息をついてスカートのプリーツを直す。
天城くんは心臓に悪いなぁ、ホント…。





「一緒にサボっちゃおうよ、先輩」


「……」





この後輩は、またこういう…。




ダメなのに、可愛い後輩でもあるから、甘やかしたくなってしまう。




…心を鬼にしなければ。





「だめ。一緒に行くの、天城くんも」





そういって、無意識に手を差し出していた。
…あれ? わたし、変な正義感うざい?





「ふっ……あははっ、かわい、先輩…っ」


「あ、あぁ…! ごめんっ…」





慌てて手を引っ込めようとすれば、天城くんがパシッと手を握ってきた。





「いいよ、一緒に行こ? そのかわり、お願い聞いて」





そのかわり、というのは。
わたしが『一緒に行こう』と手を差し出したのを、”わたしからのお願い”ということにされていて、それと交換条件ということだろうか…。





何を言われるか不安で、ごくりと唾をのむ。





「放課後、またここで待っててもいいですか」





…それは。
放課後も、会ってくれる…ということ?




思わぬ約束に嬉しくなって、口角が持ち上がる。





「うん…待ってて」





まだ夢を見ているかのような感覚のまま、返事をした。
なんだか…宙に浮いている気分だ。