だから、厳しくなるのも東都のため。



冷たいと言われても、それとこれとは訳が違う。



…っていうか、いつまでいる気?



まだ帰ろうとしない東都の様子にため息が出そうになるのを我慢して、もう一度声をかけようとしたら。



「…ちょっと、聞いてる?いい加減戻んないと怒られ──」



「俺ね、先輩に会うためだけに学校来てるんだよ。凛子先輩の顔見るだけで頑張れるから」



「っ!!」



耳元で囁く東都の甘い猫なで声。



「でも、先輩の顔見たら離れたくなくなって、独り占めしたくなる。怒られてもいいって思っちゃう」



耳にかかる僅かな吐息。



「…俺も、先輩と同い年だったら良かったのにとかくだらねぇこと考えんの」



「っ…」



それらと東都の言葉全てが矢となって、私の心臓を撃ち抜いていく。



…ずるい。



何も、ここで言うことないのに。



私が弱った東都に、とことん弱いことを知ってる上で言ってくるから尚のことずるい。



……こんなの、卑怯だ。



でも、この卑怯でずるい年下の男が、これほどまでに愛おしい。



「…わ、私だって…同じこと思うよ。会いたいな…とか」