「……！郁ちゃん！目が覚めたのね！」

看護師の藤井のよく通る声に、寝そうになっていた都は意識を引き留められた。

不安で心細い状況の中、長年お世話になっている藤井の顔を見て、ホッとする郁。

「いま先生呼ぶから、待っててね！」

そう言い残して藤井は足早に立ち去っていく。

数分後、誰かが走ってくる音が近づいてきた。

藤井と、見知らぬ白衣の医師だった。

「郁ちゃ…清水さん！目が覚めたんだね！よかった！」

誰だろうという表情をしている郁に、藤井が説明する。

「郁ちゃん、こちらは新しい主治医の竹内 碧先生。あなたは1週間前に心臓の発作を起こして倒れたの。病院に運ばれてきた時は心臓が止まった状態だったんだけど、先生が助けてくれたのよ。」

「…でも呼吸と意識がなかなか戻らないから、先生はずっと泊まりがけで様子をみてくれていたの」

碧の目の下には濃いクマがあり、髪はボサボサで、無精髭。
それに、白衣はシワだらけといった状態。

そんな見た目に、郁は少し驚くと同時に、申し訳ないと感じた。

だが、碧の顔を見ると不思議と少し懐かしい気分にもなった。