15分が経過した。

気がつくと、郁のベッドの周りには、碧、律、瞬、こころだけになっていた。

「ハァ、ハァッ……郁…!!お願いだ…!起きてくれ…ひなたが…待ってる…!」

碧の額からはたくさんの汗が流れ、息も上がっている。

「…先生…もう…郁は…」

瞬が悲痛な表情で声を絞り出すが、碧は蘇生処置を止めようとしない。

律がやるせない表情で碧の腕を掴むも、すぐに振り解いて必死に蘇生を続ける碧。


医師として、これ以上どれほど郁に心臓マッサージを続け、苦しい思いをさせても、既に蘇生できる見込みが無い状態であることは頭ではわかっていた。

しかし、夫として、大切な妻を失うことが受け入れられない碧。

執念の蘇生処置が続く中、こころが律と瞬と静かに言葉を交わし、病室を飛び出して行った。