「郁、咳が出てるから、今日は家で安静に寝てなよ。何かあったらすぐに電話すること。」

「そんなに心配しなくても大丈夫だよー。はい、これ。いってらっしゃい」

「ありがとう、いってきます」

大きく膨らんだお腹を、時折愛おしそうにさすりつつ、笑顔で碧にお弁当を手渡す郁と、そんな郁からお弁当を受け取り、手を振る碧だった。


碧が出発した後、生まれてくる子供のために、編み物をする郁だった。

郁は、胎動を感じるお腹を撫でる。

「あと少しで会えるねぇ。早くあなたに会いたいな」

お腹の子は、女の子だと言われていた。

「パパにね、あなたの名前は"ひなた"にしたいって言ったんだ。あなたがお腹にいることがわかった時、私とパパの気持ちを太陽みたいに照らしてくれた子だから」

「『いつか、ひなたと一緒に3人でピクニックして、ひなたぼっこしたいよ』ってパパに言ったら、パパは苦笑いしてたよ」


しばらく編み物に夢中になっていた郁だったが、昼頃から、咳が激しくなってきた。
体温を測ると、38℃に発熱していた。

「うーん、やっぱり熱出てきちゃったか…大丈夫だとは思うけど、一応横になっておこう」

「あなたは大丈夫?苦しくない?お腹の中、暑くないかな?」

お腹を撫でると、元気な胎動を感じ、安心する郁。

編みかけの靴下をリビングに置き、郁は寝室のベッドに横になり、眠りについた。