「17歳女性、心肺停止。先天性の心疾患があり、そちらに定期通院中とのこと。CPR(心臓マッサージ)を10分、除細動を1回行うも反応なし」

救急車のサイレンがけたたましく鳴り響くなか、救急隊員が葉山大学付属病院に連絡する。

車内では、郁の心肺蘇生が引き続き行われているが、脈は戻らない。

青白い顔で眠る郁。

「郁ちゃん…最近帰るのが遅くて無理してると思っていたらこんなことに…」

佐藤は、郁が7年前に施設に入所した時から郁を見守り続けてきた。
信じられない事態に、涙を流す佐藤。

「病院に到着しました。降ろします」

郁を乗せたストレッチャーが救急入り口に運び込まれる。

「清水郁さん、17歳。引き続き心肺停止状態です。蘇生を始めて15分が経過しています」

「…郁ちゃん!?やっぱり…なんで…!…CPR交代します!」

名札に「循環器科 竹内 碧」と書かれた医師が、ストレッチャーに乗り、郁に馬乗りになり蘇生処置を行う。


「……頑張れ!戻ってこい!郁ちゃん…!やっと会えたのに…!」


強い圧迫で、郁の細い肋骨がきしむ。

そんな全力の蘇生にも、何の反応もない。

「離れて!」

バンッ

除細動をかけられた郁の体が跳ねる。

看護師が脈をチェックする。

「先生、まだ脈触れません!」

「クソッ!…郁ちゃん!頑張れ!戻ってこい!!」

懸命な処置が続く。