皆が出て行った病室で、再び碧と2人きりになる郁。

「郁ちゃん、もう寝ようか。起きたばかりなのに、色々検査されて疲れてるだろうし」

点滴の調整をしながら碧が言う。


「…待って…碧くん…いま、聞いてほしいことがあるの」

郁が、まだ完璧には言うことを聞かない喉から、一生懸命、言葉を絞り出す。

「碧くん、私を助けてくれてありがとう…記憶が戻るのも、目を覚ますのも…ずっとずっと、待っててくれてありがとう。」

「郁ちゃん…伝えてくれてありがとう。もういいよ、今日は休もう」

碧が郁の頭を撫でる。

碧が止めるのも聞かず、郁は口を開く。

「私…碧くんのことが大好きなの。」

「碧くんにとってはただの幼馴染で、患者の1人だと思うけど、私は違う。私…碧くんに…恋してしまった。きっと、初めて会ったあの日から」

「郁…」

突然の告白に言葉を失う碧。

「…碧くん、困らせてごめん…。私がこれからも、手術を何度もしないといけないことは、わかってる。だから、これ以上は何も望んでいないけど、ただ、伝えずにはいられなかった…」

「でもお願い。これまで碧くんに…竹内先生に助けてもらった、ただの患者として、先生が無理をしていないか、体調を気にかけるくらいはさせてほしい。それがせめてもの、私の恩返し」

郁が話し終えてすぐ、碧は郁を抱きしめ、キスで郁の口を塞いだ。