ナースステーションから、看護師達が駆けつけてくる。


痩せ細った少女が体に乗られ苦痛に満ちた処置をされている光景に、皆一瞬言葉を失う。

「先生!…もう…やめてあげてください…!郁ちゃんは、これ以上の蘇生と延命を希望していません…!」

藤井が叫ぶ。

「まだ心停止してすぐだ、今なら助かる!除細動をチャージして!」

「…でも…!」

「早く!」

碧が冷静さを欠いていることは明らかだったが、碧の気持ちに気づいていた藤井は、これ以上何も言えなかった。

除細動がかけられる。

ドンッ

期待を込めて心電図を見る碧。
しかし、心電図に変化は無い。

心臓マッサージが再開され、何度も除細動がかけられる。
その度に、郁の体が虚しく跳ね上がる。

その姿の痛々しさに、目を背ける看護師もいた。


「…戻りません。先生、もう…」

「300ジュール!チャージ!」




ドンッ



「…!心拍と呼吸が戻りました!」

「やった…」

心拍は戻ったものの、心臓マッサージを繰り返されたことにより、痩せた胸にできた無数の内出血の跡と、除細動で負った火傷の跡。

無防備に胸がはだけられたまま、人形のように横たわる痛々しい郁の姿を、みんなしばらく直視することが出来ず、重い空気が流れる。

急に緊張が解かれ、ふらつく碧。

遅れて駆けつけた上級医の矢野が、碧の体を支える。

郁の姿と、病室の雰囲気、そして碧の様子を見て、瞬時に状況を理解する矢野。

「…おい、碧!お前一旦頭冷やせ!それにひどい顔だぞ。また呼びに行くから、ひとまず仮眠室行け!…しばらくお前は担当を外すから」

碧は、半ば無理矢理病室を出され、スタッフルームの仮眠室に連れて行かれた。