それから1週間、穏やかな日が続いた。

弱ってしまった心臓が劇的に回復することはないものの、郁は病院の中庭までなら歩くことができるようになっていた。

その日も、看護師の藤井の付き添いのもと、よく笑顔を見せながら、中庭の散歩をしていた。

医局の窓から見えるその笑顔に、碧は目を離せなかった。

一瞬、郁の姿が見えなくなった。

嫌な予感がし、窓を開けて彼女を探す。

しゃがみ込む郁を見つけた。

碧は走り出す。


階段を下り終わったあたりで、藤井が郁を車椅子に乗せて運んでいた。

顔が意識はあるが、顔がかなり青白く、ぐったりとしている。

「清水さん、大丈夫!?」

「突然、目眩がすると言ってしゃがみ込みました。すみません、私がついていながら…」

今にも目を閉じてしまいそうな郁。

「…急いで処置室へ!」



ベッドに寝かされ、酸素マスクや心電図の電極をつけられる郁。

看護師たちの人数が増える。

碧は慎重に心臓のエコー検査を行っている。

「心臓には大きな変化は無いな…藤井さん、血液検査をするので採血の用意をお願いします。清水さん、少しチクっとするよ」

声を出す気力が無く、郁は力なく頷いた。

また迷惑をかけたな…と思いながら、郁は力が入らない体をベッドに委ねていた。



血液検査の結果、貧血が悪化していた。

「これはあまり良くないな…今後、注射の回数を増やします」

碧は、看護師達に指示を出した。