「…あ」
「え?」
森くん、なにか気づきがあったみたい。
短く声を出した。
そして、おもむろにあたしの髪に手を伸ばして…。
「…ごみ、ついてた」
「あっ……り、がとう…」
び、びっくりした!!
そりゃそうよね。
いきなり頭撫でられるとか、ありえないよね。
なに勘違いしちゃってるんだ、恥ずかし…っ
ひとりで勝手に顔を赤くしていると。
ーータッ、タッ、タッ…。
突然廊下に鳴り響いた大きな足音。
すごいスピードで、あたしたちに追いついて。
…あたしの腕をつかんで、引き寄せた。
「ひゃ…」
「こ、小柴っ……」
うん。
森くんが名前を言わなくたって、匂いで分かった。
もう何十年嗅いできた匂いだ。
…でも、なんでここに琉架くんが?
しかも、わざわざ走ってまで。
「…俺の星花に触んないでね」
とか、言うんだ。
幼馴染のくせに。
…弟みたいな存在の、はずなのに。



