【短編】琉架くんは幼馴染を甘やかしたい






「…俺の気持ち、知ってる?」





ふる、と弱弱しく首を振った。
自分の気持ちすら、よく分かってないのに…。





「星花。…大好き」


「え…っ」





大好きって、それって。





「恋愛としての、好き」





もうダメ。
泣きそう。





「あー、泣いちゃった…」





愛おしそうに目を細めて、あたしの涙を救ってくれる琉架くん。
ずるいよ…琉架くん。
こんな形で、あたしに自覚をさせるなんて。






「…星花は、俺のものなんだよ、昔から」




だって、それじゃあ、わりにあわないよ。





「うん。俺も、星花のものね」






…こんなことって、あっていいんですか。




琉架くん、あたしのもの?






「…で、さ。話それちゃったけど」


「え…」


「男に触られたの見過ごせないから。…消毒、しないとね」





返事する暇もなく、鎖骨、首筋、頬、耳…場所を変えて、何度も何度もキスを落とされた。



何十年も一緒にいるのに、こんな琉架くんは知らなくて…。




甘くて、胸焼けしそう。
困るよ…急に、こんな。






「しょ、消毒って…触られたの頭だから、キスは関係な…っ」


「星花を他の男が触ったって事実が嫌なの。大人しく消毒されてて?」





だって。ずるいよ…。
そんな風に言われたら、大人しくするしかなくなっちゃうじゃん。






「俺さ、独占欲強いよ。…星花のこと好きすぎて、我慢できない」





ようやく止んだキスの嵐。
息も絶え絶え、乱れた制服のまま琉架くんを見上げる。




やば、腰抜けそ…。





「…ね。幼馴染やめよっか、俺たち」


「え…?」



「これからは恋人。…ダメ?」





もう一度、鎖骨にキスを落としながら上目遣い。
…ダメなんて、言えるわけない。





幼馴染とか、置いといて。
今、あたし。琉架くんしか、見えてない。






「だ、だめなわけない…っ」


「うん。俺の彼女になってくれる?」



「…なるっ」





だから、一生離さないでよ。



あたし、恋に気づいたらめんどくさいから。



嫉妬もたくさんするし、独占欲だって強い。
束縛は…なるべくしたくないけど。






「るかくん、だいすき…」





そうして、たった今彼氏になったばかりの元幼馴染の首に両腕を回して、触れるだけのキス。




こうすると、ほら。
無気力男子から、オオカミへ。





「…襲われたいみたいだね」





うん。
いっぱい、痕つけて。




あたしを、琉架くんだけのものにしてね…?





そのあと、次の授業もふたりでサボってみたりした。
この瞬間、世界にあたしたちだけ……なんて、そんな気がして。




いつまでもこの時間が続けばいいな…。
…なんてね。





E n d .