でも、ちょっと高い位置にあるかも。

料理は最後まで自分ひとりで頑張りたいから、あんまり浬恩を頼りすぎたくない。


背伸びすれば届くかな。



「んーっ」



手を伸ばしてなんとか両手で掴むことができた。

このままゆっくり降ろせば……。

なんていうのは考えが甘くて。



「っッ!?」



しっかり持っていたはずなのに、手が滑ってしまった。



「詩架……!!」



わたしが〝やばい!〟と感じたと同時に、浬恩がわたしの名前を呼んでくれた。


バランスを崩した物とわたしはそのまま倒れて……。


——ガッシャーン



「っ〜……」



大きな音が部屋中に響いた。

……だけど、体に痛みがない。


むしろ大好きな匂いに包まれてて……。


そっと目を開ければ、浬恩がわたしを抱きしめていた。



「詩架! ケガしてない!?」



あれ? 浬恩……?