「詩架さま、」



何度も声をかけてくれてるけど、わたしが目を開けないのは浬恩との時間が欲しいから。

起きたのがわかったら、浬恩はたぶんすぐに部屋を出ていってしまう。


理由もなく一緒にいられるのは朝くらいしかないから、少しくらいわがままでもいいでしょ……?


なんて浬恩を困らせるようなことをしているのはわたしのほうのはずなのに、

さっきよりも近くから聞こえてくる声に胸が飛び跳ねる3秒前。



「起きないと、キスしますよ」



甘すぎる囁きに目を閉じてなんていられなくなった。


びっくりして目を大きく開くと、目の前にはにっこりと爽やかに微笑む浬恩。



「やっと起きられましたね。おはようございます、詩架さま」