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「——か……さま……詩架(うたか)さま」



大人っぽい落ち着いた男の声がどこか遠くから聞こえてくる。



「詩架さま、朝ですよ。起きてください」



そう優しい目覚ましでわたしを起こしてくれるのは、ひとつ年上の執事の鮫島 浬恩(さめじま りおん)。

わたし、篠宮 詩架(しのみや うたか)を毎日起こしに来てくれるのが、彼のお仕事のひとつ。


これは、わたしが5歳のときから続けてもらっていること。


だけどね、わたしにとって浬恩はただの執事ではない。



幼なじみみたいで、

兄妹みたいで、



それから……。




——大好きな、初恋の人。