嘘つき運命ごっこ

人知れず視線を落とし気味にしていると、教室の扉の方から私を呼ぶ声が届いた。


「芙結ー!芙結、呼んでって」

「あっ、はーい」


クラスメイトの女子のそばにいるのは、同じ中学だった友達の若菜(わかな)。


「久しぶり、芙結」

「そうだね、クラス違っちゃうとあんまり会えないもんね。どうかしたの?」


若菜に話しかけながらも、私の目は彼女の右手に向いてしまう。

少し前に会った時にはなかったのに、……赤い糸だ。


「えっと、あの……」


歯切れ悪く口ごもる若菜は、教室の中を気にしている。

その先を追うと、リサが瑞貴と一緒にじっとこちらを見ていた。