嘘つき運命ごっこ

「ごっ、ごめんなさい……!いつものくせで、何も言わないで入っちゃって」

「ふふ、ちょっと慣れないわよね」

「えへへ……。ただいま……です、直子さん」

「おかえりなさい」


パパが帰るまではいつもひとりでいたから、「ただいま」を言う立場になるのは少し気恥ずかしくて、頬が熱く感じる。


靴を脱いで廊下を歩くと、ふわりといい香りがした。

直子さんについて行ってキッチンを覗くと、コンロにかけられた鍋があった。


「あれ?夕飯作ってくれてるんですか?ありがとうございます」


そういえば、再婚を機に直子さんは仕事を辞めて専業主婦になったって……昨日聞いたような聞かなかったような。

何しろ、赤い糸の運命を学さん本人にバッサリ斬られてから、ショックでその後の記憶が曖昧になっている。


「やだ、そんな他人行儀に。今までは、ずっと芙結ちゃんが作ってくれてたのよね」

「パパには、あんまり評判よくなかったんだけどね、私の料理って」