ふたりで家に帰る頃、辺りはすっかり暗くなっていた。

夕飯までには帰ると言った直子さんに、気にしないでゆっくりしてと言ったはずなのに、私たちの方が遅くなってしまった。

家の窓から、明かりが漏れている。


「今日は、ありがとうございました」


玄関先で腰を折って頭を下げると、小さくため息をついた学さんは、私の頭をポンッと軽く撫でた。


「いいよ、笑わなくて。昼から、本当はずっと元気なかっただろ」


驚いて顔を上げると同時に、大きな手のひらも離れていく。


「あんまり無理すんなよ。俺には、頑張って笑わなくていいから」


学さんが、先に玄関に入る。

撫でられたところに触れると温かくて、私はしばらくその場でうつむいた。