体育祭の前日。
 わたしは先輩に会いに、放課後、陸上部へ行った。
「しずくちゃん! どうしたの?」
 突然の訪問にもかかわらず、先輩は笑顔で出迎えてくれた。
「すみません、練習中に。今日は、先輩にこれを渡したくて」
「ミサンガ?」
 わたしはコクッとうなずいた。
「小さいころ、入院してたときに看護師さんから教えてもらったんです。白いひもで編んだミサンガはケガのお守りになるって。先輩、前にわたしのことはげましてくれたから、なにかお礼がしたいなって思って」
「えっ、これってしずくちゃんの手作り? すっげー! 器用だね」
 わぁ、予想外にほめられちゃった。な、なんか恥ずかしい……。
「ホントは手作りよりも、ちゃんとしたお守りのほうがいいかなって思ったんですけど……」
 けれども、先輩は首を横に振って、
「いや、うれしいよ。しずくちゃんの気持ち。体育祭のとき、これ身に着けて走るから。おたがい、がんばろうな!」
 と、目を細めた。
「はい!」
 わたしも自然と笑顔になって、そう答えた。