私は急いで涙を拭いて出た。
「もしもし」
「もしもし」
相変わらずの声だ。後は静かだった。
「どうしたの」
「ちょっと、久しぶりに話したくなって」
かしこまった口調で言うから、どんな表情しているのか全く読めない。
「もう私たちって終わったんじゃなかったっけ」
「終わりました」
「じゃあ、これは何」
「いいじゃないですか、べつに」
声が笑った。気怠そうな、ゆっくりとした声。
なんでこの人は私に電話をくれるんだろう。
「あの」と彼は続けた。
「今から俺そっちの部屋行っていいですか」
「今から?」
「会いたいです」
気付いてしまった。
私はこの人のことが好きだ。すごく好きだ。声も、顔も、手も、足も、帽子も、帽子から覗く前髪も。
「うん、来て」
私は驚くほどカラカラの声になっていた。
きっとそれを言うのには勇気が必要だったからだ。
「行きます」
彼の笑った表情から出る声が電話の向こうでした。
「もしもし」
「もしもし」
相変わらずの声だ。後は静かだった。
「どうしたの」
「ちょっと、久しぶりに話したくなって」
かしこまった口調で言うから、どんな表情しているのか全く読めない。
「もう私たちって終わったんじゃなかったっけ」
「終わりました」
「じゃあ、これは何」
「いいじゃないですか、べつに」
声が笑った。気怠そうな、ゆっくりとした声。
なんでこの人は私に電話をくれるんだろう。
「あの」と彼は続けた。
「今から俺そっちの部屋行っていいですか」
「今から?」
「会いたいです」
気付いてしまった。
私はこの人のことが好きだ。すごく好きだ。声も、顔も、手も、足も、帽子も、帽子から覗く前髪も。
「うん、来て」
私は驚くほどカラカラの声になっていた。
きっとそれを言うのには勇気が必要だったからだ。
「行きます」
彼の笑った表情から出る声が電話の向こうでした。



