〇通学路

今日は髪のセットに少し時間がかかってしまったため、急ぎ足で学校へ向かう。

愛羽「あんな夢のことなんて考えたって仕方ないのに、、、」

数十分前の自分にため息をつきながら、顔をあげたその時。

借金取り1「お前、白石 愛羽か??」

ガラの悪い3人に囲まれていることに気づいた。
近道をしようと裏地に入ったため、周りには人がいない。

愛羽「え?、、、は、はい」

何が何だか分からず、咄嗟に返事をする。
しかし、混乱する頭の片隅では、なんとなく相手がどんな立場の人なのかは少しわかっていた。

目の前に請求書を突きつけられる。

借金取り2「そろそろ金返して貰わないと、困るんだよなぁ」

借金取り3「いつ返してくれんの?それか、良い就職先紹介してあげようか?」

借金取り1「こいつよく見るとまあまあ可愛い顔してるしな」

愛羽「あ、あの、、私、、」

恐怖で何も言えなくなる。
目頭には涙が溜まっていた。

借金取り2「なぁ?どうすんの?払うの?払わないの?女子だからって手加減してたけどこっちだって仕事なんだよ」

段々と借金取りの体が近くなり、ぎゅっと目を瞑る愛羽。

愛羽 (誰か助けて、、、!)

彗「、、、見つけた」

青年が現れ、周りにギリギリ聞こえないような声量でつぶやく。

借金取り3「ん?なんだお前?なんか文句あるのか?もっとハッキリ言えよ!」

愛羽に向けていた視線を青年に向ける借金取り。借金取りと体が近いことで、愛羽からは青年の顔は見えない。

借金取り2「見せもんじゃねえからよ。痛い目見たくなかったらさっさと失せろ!」

慧「俺の右手の封印が解かれて暴走してしまう前にお前たちが失せるんだな、、!!」

愛羽(借金取りに加えてまた変な人が来た、、?)

顔を青くして震える愛羽。

借金取り1「なんだよお前!さっさと失せろって言ってんだろ!」

怒りが限界に達したのか、青年に殴り掛かる借金取り。
そしてそんな借金取りをひらりと交わす青年。

借金取りが動いたことで青年の顔が見える。
鮮やかな金色の髪が目に留まった。同い年か、少し年上くらいだろうか。この辺では中々見ないようなイケメンだ。

愛羽「誰、、、?」

愛羽がそう呟くと、彼は愛羽の方を向き、自身の唇に人差し指をつけ、軽くウインクをした。
そしてまた借金取りに向き直る。

慧「関係ないなんてないですよ。彼女は俺にとって大切な人なんですから」

先程とは打って変わって丁寧な口調になった青年に戸惑う借金取りたち。愛羽もその変わりように戸惑い、さっきの彼の言葉はきっと幻聴だと自分を納得させた。

借金取り1「だからなんだよ!?俺の拳を交わしやがって!!お前が金払ってくれんのか?」

慧「ええ、払いますよ。これで足ります?」

青年は札束を懐から取り出し、乱暴に借金取りに投げつけた。

借金取り1「た、足りるも何も、、、」

借金取り2「こんな大金、、、」

借金取りたちは、投げつけられた札束を見て言葉を失った。

普通に生きていては、目にすることのないような量の現金だ。

慧「多すぎますか?まあでも、これであなた方が彼女に2度と関わらないのなら、安いものです」

笑顔でそう言った青年を見て借金取りはよろけながらその場を後にした。
しっかり札束は拾い上げて。

愛羽「あの、、ありがとうございます、、。助けていただいて、、。お金はきちんと返します。何年かかるか分からないですけど、、」

突然現れた青年に戸惑いつつも、愛羽は深く頭を下げた。

慧「返すなんて、、そんなのいらないです。あなたが無事なだけで十分ですから」

そんなことを言う青年の顔を、愛羽は怪訝そうに見つめる。

愛羽(初めて会った人なのに、まるで私を知ってるみたい、、、)

顔をまじまじと見ると夢の中に出てくるあの人を彷彿させる気がしなくもない。

愛羽「あの、私たち昔どこかで会ったことがありますか?」

慧「さあ、どうでしょう」

手をひらひらさせながら、笑顔で話を逸らされる。

愛羽「何にしてもあんな大金、、申し訳なさ過ぎます。返さないと私の気が済みません」

慧「いや、お金の件に関しては別にどうでもいいんですけど、、、」

そう言いながら青年は口に手を当てながら考える素振りを数秒して、何かを思いついたかのように目を見開いた。

慧「そこまで言うのなら1つ提案なのですが」

愛羽「は、はい!!」

思わず身構える愛羽。
一体どんな要求をされるのだろうかと、不安で瞳が揺れる。

青年はそっと愛羽の手をとって小悪魔のような笑みを浮かべた。

慧「僕と結婚しませんか」

愛羽「、、、え?」

この時の私はまだ知らなかった。

この出会いが偶然じゃないことを、、。