「それで、我が家が火災保険に加入するとして、保険料はいかほどになるのでしょう?」

「そうですね……ざっくりとこのぐらいでしょうか? 事前におうかがいしていた屋敷の造りや広さ、家財の価値から算出した数字です」

「まぁ……」


 高っ! なんなんですかこの数字は! ゼロがたくさん並んでいます。
 そりゃ、火災ですべてを失ったら、かかる費用はこれの比ではありません。
 それにしたって、とっても高い。わたくしは思わず言葉を失います。


「最近では火災が相当増えていますからね。おかげさまで、たくさんの人々にこちらの保険を支持していただいています」

「……そうでしょうね」


 どれだけ高い買い物でも、必要性を感じれば人は動きます。

 この数週間の間に王都で起こった火災は、前年比三倍。つまり、それだけ多くの火災が起こっています。

 当然、人々が抱く不安感も倍増します。もしも次に燃えるのが自分の家だったら――そう思って焦って保険に加入する人はあとを立たないでしょう。金持ちの貴族たちはなおさら。……わたくしはゆっくりと息を吸います。