「それでも、クラルテがクラルテらしく笑っていられることが、俺にとっての幸せだから」


 ハルト様がそう言って微笑みます。とびきり温かい、優しい笑顔です。


(わたくし、この人を好きになってよかった……)


 ハルト様に出会えて、好きになれて、本当にとても幸せだと思います。想いもちゃんと届きましたしね!今のわたくしって、向かうところ敵なしというか、最強なんじゃないでしょうか?


「ところで、今度一緒に出席する夜会の件だけど」


 感慨に浸っておりましたら、旦那様がおもむろに話題を変えます。わたくしは身を乗り出しつつ「はい、なんでしょう?」と元気に返事をしました。


「兄たちが来るらしいので、クラルテを紹介したいんだ。会ってくれるだろう?」

「…………え?」


 兄。
 お兄様。
 ハルト様のお兄様。


(――すっかり忘れていました)


 わたくし、全然最強なんかじゃない。
 一気に血の気が引いてしまいました。