「いや、そういうわけにはいかないだろう」


 思い切って疑問をぶつけてみたら、旦那様は困ったように眉根を寄せました。よく見れば少しだけ顔が赤くなっています。


(……もしかして、わたくしのためでしょうか?)


 貴族としての体面を保つだけなら、ごく少人数を雇えば事足ります。けれど、それでよしとしなかったのは、わたくしを想ってのことなんじゃ? ――なんて、うぬぼれがすぎるでしょうか?


「それにしても、最近は火事が多いですね」


 旦那様とのデート(出勤時間)を満喫しつつ、わたくしはちょっとだけため息をつきます。

 王都は広く、その分だけ火事も多いです。旦那様たちは毎日たくさんの出動依頼を受け、たくさん火を消しています。けれど、ここ数日ほど、その件数が異様なまでに増えているのです。