人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

雲がゆったりと流れていくように、僕らの1日も始まっていく。



授業中、

僕は窓から見える羊雲も目で追っていた。



どこへ向かっているのかも分からない雲を見てただ黄昏れる。



「———『ばかだ』、『ぼくはばかだ』と繰り返したKはどういった心情だったと思う?」



現代文を教える今田は歩き回りながら、

誰かが答えるのを待っていた。



『ばかだ』、『ぼくはばかだ』?



僕にぴったりな言葉な気がして、

何だか惨めになっていく。



本当にバカだった。


森本さんに軽率な発言をしてしまったことをずっと引き摺《ず》っている。


きっと、森本さんも僕に対して言った言葉を悔やんでいるのだろう。


すると、

今田が僕の目の前に立ち、

持っていた教科書で僕の頭を軽くポンっと叩いた。



「おーい!一ノ瀬、教科書じゃなしにどこ見てんだぁ?」



クラスメイトが嘲笑う中、

注目の的を浴び、我に戻る。



まぁ、いつものことだから、

もう慣れたんだけど……




「何、ボケっとしてる?どういう心情だったか答えてみろ!」



「えっと、相手の気持ちも知らずに軽率な発言をしてしまって悔やんでいる……いや、それは違うか!」



「うん、ちげぇよ!ホント、ちゃんと聞いてたのか?たくッ、森本は分かるよな?」



今の自分の気持ちなんて知らない今田は愛想を尽かすだけで、これ以上、悪化することはない。


僕が答えれなかったせいで、僕と同じく授業に集中していなかった森本さんまでもが餌食になる。



「えッ!それは言い過ぎちゃて傷つけ……いや」



「なんだなんだぁ、森本までどしたー?」



「……すいません」



「さっき、死んだ魚のような目してたぞぉ」



今田の発言にクラスメイト達は笑っていた。



こんなこと初めてだったのだろう。



森本さんは顔を真っ赤にさせ、

深く落ち込む様子を見せていた。



「まぁいい!神崎、お前なら分かるだろ?」



「えっと……精神的に向上心がなく、恋のために『道』を踏み外そうかと迷い、自分を責めてるんだと思います」



「おォ〜さすがだな、ここテスト出すからな〜。いいな?出すって言ってんだから、ここ間違えてたら……そうだなぁ、二時間ぐらい説教するからな?はは」



今田の正気なのか冗談なのか、

分からない奇妙な笑いに、

クラスメイト達は不気味に感じていた。



そうと言ううちに、

チャイムが響き渡り、

今田の現代文は終わった。