人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

———ドンドンドンッ



部屋中に響き渡るドアを叩く音、最悪の目覚めましの先には不機嫌そうにする母さんが居た。



「仁、何回も言わさないで!ご飯よ、早く降りてきなさい!」



僕は母さんの苛立つ姿を確認すると、

身体をゆっくりと起こし、

これ以上イライラさせないよう、

まだ眠たい瞼を擦りながら、

階段を早々に降りて行く。



「早く食べちゃいなさい。片付かないから」



リビングに行くと、

母さんは食器を洗いながら、

いつものように家事をしていた。



中々、食器が片付かない原因は父さんにもあるだろ。


長々と晩酌を楽しんでいる父さんの隣に座ると、僕は黙々と食べ始めた。


「仁、勉強はしてるのか?寝てばっかで!そんなんじゃ、大学になんて行けないぞ!」



はい、また始まった。


誰が大学に行きたいって言った?

いつ大学に行かして下さいって僕がお願いした?

はァア!ふざけんな、すべて親のエゴだろ?



父さんから口酸っぱく、

毎日のように聞かされるお決まりの言葉にうんざりする僕は、顔には出さないように返事をするだけだった。



もはや、反抗すんのもめんどくさい。


頭の固い昭和な父さんだから、反抗なんてすると、ちゃぶ台が宙を舞うことになるだろう。


あと先考えてしまう僕はこういうところまで配慮し、

予測しながら家族と暮らしている。


ホント居心地の悪く、気を遣わなければいけない碌《ろく》でもない家だった。



だから、僕が成長していくにつれ、

両親との会話は減っていく。


別に嫌いになったから会話が減ったとかではなく、すぐにカッとなる親と口論になるのが面倒くさいだけ。


一緒にいるこの空間が無理な僕は、勉強するわけでもないのに、自分の部屋へと戻って行った。



下から聞こえる微かな声。


母さんは父さんと会話をしていた。



「あの子、何考えてんだか分かんないわ」



「そうだな、あんまし喋らんしな」



「自己主張しないし、反抗もしないでしょ?まあ、反抗期がないから助かってはいるんだけどね」



「そうだな、亨や航と違って素直じゃないとこあるからな」



僕はイヤホンを耳に当て、両親の会話が聞こえてこないように殻に閉じ籠る。



———そうだよ



少しでも迷惑かけないように、少しでも良い子でいようと、必死に我慢してきたんだから。


素直になれるわけがねぇだろ!


ホントこの家に生まれて人生、最悪だ。


自分の本心が言えない環境にしておいて、何が考えが分からないだ。


分かろうともしないで、よく平気でそんなこと言えるな!



僕は考えるのやめ、今はただ音楽で気持ちを安定させるしかなかった。