今まで、両親から言われるがままの人生を過ごしてきた僕には、夢なんて持つことができなかった。



いつも親が決めたことを従うだけの人生。



忠犬にでもなったつもりか、

いやそうじゃない。



いつからか僕は親の前で笑わなくなった。



こんな引っ込み思案な僕に比べて、

家族や地域の人に愛された兄ちゃんは、

偉大だった。



思ったことをはっきりと言えて、

面倒見が良い、

おまけに頼り甲斐があって尊敬できる人。



僕の自慢の兄ちゃんだった。



兄ちゃんはこんな弟《ぼく》を

最期まで気にかけてくれていた。





命には限りがある。



この世で生を授かってから、

生涯を終えるまで、

はたして何ができるのだろうか?



人は皆、『後悔しないように生きろ』

と簡単に言うけれど、

はたして悔いを残さず、

生きた人などいるのだろうか?



人生は想像以上に過酷で、

高校一年生になった僕には、

山あり谷ありの険しい道のりだった。



兄ちゃん?



聞こえてる?



僕のこと見ててよ……



僕の人生、虹色に染めるから。



輝く陽光が差し込む雨上がり、


青く透き通った空に映る虹を見つけ、


しばらく僕は眺めていた——。